海中給電(SeaWPT)
海中の無人機に高効率、高電力で送電
無人機の固定が不要な革新的ワイヤレス充電
今回はワイヤレス電力伝送実用化コンソーシアムのブースに水槽を設置。海水と同じ塩分濃度の水を入れ、ロボットが水中でワイヤレス給電するデモを行いました。従来、このような海洋調査で使用されるロボットは、海中で6~7時間活動したのち、船上に引き上げて充電をしなければなりませんでした。充電後に再び調査海域に沈めるとなると、かなりのタイムロスになり作業が非効率ですし、人手が必要になってします。今回展示した技術は、送電コイルを海中に沈め、ロボットがいつでも海中でワイヤレス充電できるというものです。
デモでは、沈めた送電コイルに近づいたロボットに電力が供給されることでポンプが回って上昇し、送電コイルから離れて電力供給が届かなくなると自重で沈み、また送電コイルの近くまで来ると給電が再開されることで動き続けることができることを実演しました。
この技術の一番の特徴は、送電コイルとの位置合わせが不要なポジションフリーであるということです。このデモでは、直径30cmの送電コイルから上に約15cmの範囲であればどこでも電力を届けることができます。

海中でロボットの連続作業が可能に!
移動体に充電できるポジションフリーを実現
会場ではトカラ列島の最北端にある口之島の海域で行った実験の様子を映像でお見せしました。この実験は、平成30年度安全保障技術研究推進制度における「海中移動体に大電力を送る革新的ワイヤレス給電に関する研究」のプロジェクトとして行われたものです。 実験では実際の海域で水中ロボットに3kWの電力を給電することに成功しました。直径2メートルの輪になっている送電コイルを3つ直列させた充電スタンドと、直径50cmの胴体に受電コイルを巻いたロボットを沈め、ロボットが充電スタンドの中に入ると、どの位置でも充電することが確認できました。 この水中ロボットは重さ300kgほどですが、海中では少し浮く重量に調整されており、海中でホバリングはできますが潮流に影響されて揺れるため、充電スタンドとロボットの距離は常に変化していました。その状態でも最大効率約80%という高効率で充電できました。

10年越しに実現した世界でも稀有な技術
調査や観測、警戒監視などに活用可能
水中は地上と比較して電波が飛びにくい環境です。また海中は淡水よりも電波が飛びません。当社ではこのプロジェクトを開始する以前、10年ほどかけて海中で電波が飛ぶ周波数を探すことから始め、1.5kHzという低周波数を使用することで高効率でワイヤレス給電できることを実証しました。海中でのワイヤレス給電をするだけでも世の中でもあまりない取り組みですが、さらにポジションフリーでこれだけの大容量の電力を高効率に充電できるのは、世界でも稀有な技術だと自負しています。
現在はこの技術の用途を開拓する活動をしています。調査や観測、警戒監視などに活用が可能です。当社としても心血注いで開発した技術なので、ぜひとも商品化して一般に普及させたいと意気込んでいます。こうした技術をお探しの方はお声がけください。
(説明員:無線技術開発部 山口修一郎)
ワイヤレス給電開発
様々な周波数・電力・距離に対応
様々な技術が支えるワイヤレス給電開発
今回はワイヤレス電力伝送実用化コンソーシアムのブースに出展ということで、当社が手掛けてきた電力伝送の開発についてまとめたパネルを展示しました。横軸に送電距離、縦軸を受電電力にしてこれまでの実績をマッピングし、それぞれの周波数を明記しています。開発実績を見ると様々な周波数、電力、距離を網羅しているのがお分かりいただけると思います。
またパネルの下部にはワイヤレス電力伝送について当社が保有している技術を掲載しています。
もともと当社は基地局の大電力増幅器やアンテナ無線開発といった領域を得意としていました。さらに当社では、車載の充電器や太陽光パネルから発電した電力を変換するパワーエレクトロニクスの技術を持っています。加えて、熱対策の機構技術を獲得し、それらの技術を組み合わせることで、ワイヤレス電力伝送に適用できるように技術を深めてきました。非常に広範囲の実績があり、ものづくりにも踏み込んで取り組むことで、お客様のお役に立てると考えています。


6.78MHzの電力伝送を車載機に
ものづくりまで踏み込んだ技術提供
会場では、実際に当社が手掛けてきたワイヤレス電力伝送の事例として、車のエアコンレジスタを展示しました。車載エアコンの吹き出し口にあるつまみの部分にLEDの淡い光を点灯させています。この電力伝送には6.78MHzを使っており、当時この周波数を使ったワイヤレス電力伝送を自動車に搭載したのは世界初ということで、メディアにも取り上げられました。
吐き出し口はクルマメーカーのデザインなので、当社が決めることはできません。また、車載機に求められる厳しい電磁ノイズ規定も満足する必要があります。これらの制約の中でコイルの位置を合わせて適切な電流を確保する必要がありました。
さらに製造面では、設計した当社の技術者がお客様の製造工場に伺い、ワイヤレス電力伝送のノウハウをものづくりの工程ラインに反映するところまで一緒に取り組みました。
(説明員:技術総括 金子哲也)

イベント資料はこちらからダウンロードできます
「マイクロウェーブ展2024」で出展しました「海中給電(SeaWPT)」「ワイヤレス給電開発」「⼤型6⾯暗室 測定‧評価サービス」「B5G/6G無線通信システム先⾏技術開発」のパネルデータは、こちらからご確認いただけます。
⼤型6⾯暗室 測定‧評価サービス
大型の6面電波吸収体暗室をご提供
大型測定物でも安定した測定を実現
当社では2023年10月に神奈川県横浜市に大型の6面電波吸収体暗室を開設しました。測定物と測定用のアンテナの間を標準で6m確保しているのが特徴となっています。1mを超える大型の測定物についても、安定して測定できる3mのクワイエットゾーンを確保した暗室です。
無線通信で利用される周波数は年々高くなってきていますが、周波数が高いほど、電波の減衰が大きくなり、通信距離が短くなります。そのためアンテナの利得を高めて通信距離を稼ぐ必要があります。そのような利得の高いアンテナを正確に評価するためには、評価するアンテナと評価用アンテナの距離を十分にとる必要があり、当社の暗室では6mまでの距離に対応をいたしました。この暗室を、高利得アンテナを測定されたいお客様に活用していただけるよう、暗室を貸し出すサービスを開始しました。ただ貸し出すだけではなく、無線機器の設計の経験がある技術者がサポートします。測定のプロセスについてのコンサルティングも含めて一括でサービスを提供することができます。


施設には充実した測定機器を完備
通信以外の目的にも活用が可能
暗室や測定器が対応する周波数帯についてもサブテラヘルツ帯まで対応しているのが特徴です。次世代通信の6Gではサブテラヘルツ帯の活用が検討されており、そうした研究開発にも対応することができます。アプリケーションとしては、5Gの基地局のOTA評価や、エリアの狭いミリ波の通信に欠かせない反射板の測定などを想定しています。また通信以外にも、79GHzという高周波数帯を使用する車載レーダーの評価ができる設備も用意しています。
また、アンテナの特性を出すためには、シミュレーションで材料の電気特性を考慮する必要があります。こうした様々な材料の高周波特性(誘電率、誘電正接)を測定できる測定系についても用意しています。
これだけの暗室と測定機器が用意されており、かつ、サービスとして利用可能な国内サイトは、ほとんどないはずです。通信に限らず、さまざまな目的を持つお客様にご利用いただきたいと考えています。
(説明員:無線ソリューション部 泉貴志)
基板の窓口様の「動画展示会レポート」で大型暗室サービスのインタビュー動画が掲載されました
B5G/6G無線通信システム先⾏技術開発
次世代通信システムのPoCで求められる試作機
FPGAにより4.8GHzの通信を実現した実績も
Beyond5Gや6Gなど次世代の通信システムでは、双方向での高速大容量、広範なエリア、多端末同時接続のネットワークとなるため、システムも複雑になります。そのため大手キャリアや基地局メーカーのお客様では、試作機を作り、フィールドテストを重ねていくことが求められています。
当社では試作機の開発を受託しており、方式検討から実機の検証・評価までワンストップで対応しています。4.8GHzという超広帯域の通信実験装置として、市販のFPGAを活用し、2x2MIMO・20Gbpsの通信速度を実現したという実績もあります。

試作機の仮想化でより短期間でPoCが可能に
目的や期間、コストを考慮して柔軟に環境を構築
最近ではより短期間でPoCを行うために、ソフトウェアで試作機を作りたいというニーズも増えています。そこで、ナショナルインスツルメンツ(NI)社の機器を使用して、システムの部分のみソフトウェアで実装して無線装置を作る技術を提供しています。
開発事例としては、Beyond5G・6Gに向けた新たな無線方式(NOMA)を、NI社のLabVIEWで実装し、模擬的な基地局を開発しました。また、PCのソフトウェア上で基地局の動きをするオープンソースの環境(OAI)を利用してPXIシステム上に構築し、ローカル5Gで動作する装置を開発しております。現状のソフトウェアおよびハードウェアでは通信速度に限界があるため、今後FPGAを活用し、高速に動作する環境を構築する取り組みを行っております。
このようにプロジェクトの目的や期間、コストを考慮して柔軟に環境を構築することが可能です。次世代通信のPoCを検討されている方は、一度ご相談いただければと思います。
(説明員:無線ソリューション部 泉貴志)
まとめのメッセージ
2030年に向けたマイクロ波技術に注目が集まる
会場には様々な業種で研究開発を行うお客様がブースを訪れ、熱心に質問をされていました。当社が積み上げきた技術開発が、豊かな社会生活の実現を支える技術としてさらに活用されていく未来が感じられ、多くの収穫があった出展でした。